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東京地方裁判所 平成9年(ワ)26221号 判決 1999年5月13日

原告

小野田佐代子

ほか三名

被告

新谷孝

ほか一名

主文

一  被告らは、連帯して、原告小野田佐代子に対し二一八四万五九九九円、同小野田充議、同小野田達弥、同小野田吏紗に対しそれぞれ六八一万五三三三円及びこれらに対する平成八年六月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らの被告らに対するその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを一〇分し、その一を被告らの、その余を原告らの負担とする。

四  この判決は、原告らの勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一原告らの請求

被告らは、連帯して、原告小野田佐代子に対し一億二六六八万五二七九円、同小野田充議、同小野田達弥、同小野田吏紗に対しそれぞれ七四二三万一七五九円及びこれらに対する平成八年六月二四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  本件は、自動二輪車を運転中、後記交通事故により死亡した小野田政明(以下「亡政明」という。)の法定相続人である原告らが、被告らに対し、右事故によって亡政明ないし原告らに生じた損害の賠償を求める事案である。

二  争いのない事実等(当事者間に争いのない事実、証拠〔甲第一、第二号証、第三号証の一、二、乙第一号証の一ないし九、第二号証〕及び弁論の全趣旨により認める。)

1  交通事故の発生(以下「本件事故」という。)

(一) 事故の日時 平成八年六月二三日午前二時一五分ころ

(二) 事故の場所 東京都目黒区目黒三丁目一二番七号先路上(以下「本件事故現場」という。)

(三) 被告車 自家用普通乗用自動車(千葉五三み三八四八)(運転者・被告新谷孝〔以下「被告孝」という。〕、所有者・被告新谷健二郎〔以下「被告健二郎」という。〕)

(四) 原告車 自家用自動二輪車(一品川ひ二三九九)(運転者・亡政明)

(五) 事故の態様 原告車が本件事故現場付近の車道の一番右側の車線を直進中、車道左端に停車していた被告車が、本件事故現場の道路が転回禁止であるにもかかわらず突然転回したため、原告車の前部と被告車の右側面とが衝突し、同日亡政明は頭蓋内損傷により死亡した。

2  相続関係

原告小野田佐代子(以下「原告佐代子」という。)は亡政明の妻、原告小野田充議(以下「原告充議」という。)、同小野田達弥(以下「原告達弥」という。)及び同小野田吏紗(以下「原告吏紗」という。)は亡政明の子であり、亡政明の権利義務を原告佐代子が二分の一、原告充議、同達弥及び同吏紗が各六分の一の割合で相続した。

3  損害のてん補

原告らは、被告健二郎の自動車賠償責任保険から保険金三一二〇万円、任意保険会社から一一万四六一〇円、合計三一三一万四六一〇円を、それぞれその法定相続分に従い受領した。

4  責任原因

被告孝は、前記1(五)の過失があるので民法七〇九条に基づき、また、被告健二郎は、本件事故当時加害車を所有しこれを自己の運行の用に供していたから自動車損害賠償保障法三条に基づき、それぞれ原告らに生じた損害を賠償すべき責任がある。

三  争点(原告らの損害)

1  原告らの主張

原告らは、本件事故による損害を次のとおりであると主張する。

(一) 亡政明の損害

(1) 逸失利益 一億五一二八万八〇六〇円

亡政明の平成七年度の給与所得四八〇万円を基礎とした逸失利益(六七歳まで)及び右期間における昇給分並びに六七歳以後八年間の逸失利益の合計として頭書金額が妥当である。

(2) 慰謝料 三九〇〇万円

(二) 原告佐代子の損害

(1) 葬儀費用等 二六二万六六六一円

(2) 固有の慰謝料 三九〇〇万円

(3) 弁護士費用 七一三万円

(三) 原告充議、同達弥及び同吏紗の各損害

(1) 固有の慰謝料 各三〇〇〇万円

(2) 監護・教育費に関する損害 各一三一八万円

教育費等については、公立中学校三年分一五二万円、私立高等学校三年分三六〇万円、私立大学理系四年分八〇六万円とするのが相当である。

(3) 弁護士費用 各四二〇万円

2  被告らの主張

すべて争う。

第三当裁判所の判断

一  亡政明の損害

1  逸失利益 四〇六〇万六六〇八円

(一) 証拠(甲第五号証の一、二)によれば、亡政明の平成七年度の給与所得は四八〇万円であることが認められ、亡政明の年齢等を考慮して、右額を基礎収入とするのが相当である。また、証拠(甲第五号証の一、二、第七号証)及び弁論の全趣旨によれば、亡政明が原告らを扶養していたと認められること等を考慮して、生活費控除率は三〇パーセントとするのが相当である。そこで、亡政明の逸失利益としては、死亡時(満四八歳)から六七歳までの一九年間分を、ライプニッツ方式により中間利息(年五分)を控除して現価を算定した頭書金額と判断する。

(二) 原告らは、亡政明には右期間の昇給分及び六七歳以後八年間の逸失利益があると主張する。

証拠(甲第七号証、第一〇号証)及び弁論の全趣旨によれば、亡政明は指圧師であったことが認められるが、指圧師の給与が毎年上昇すること及び亡政明が六七歳以後も給与を得た可能性を認めるに足りる証拠はないから、原告らの右主張は採用できない。

2  慰謝料 二八〇〇万円

前記第二の二1(五)の本件事故の態様、亡政明が原告らを扶養していたこと、その他本件に現れた事情を総合的に考慮すれば、死亡慰謝料としては、頭書金額が相当である。

3  小計 六八六〇万六六〇八円

二  原告佐代子の損害

1  葬儀費用等 一二〇万円

本件事故と因果関係ある損害としては、頭書金額が相当である。

2  固有の慰謝料

本件全証拠によっても、前記一2に認定の死亡慰謝料とは別個に、原告佐代子固有の慰謝料を認容するに足りる事情は認められない。

3  亡政明の損害についての二分の一の法定相続分 三四三〇万三三〇四円

4  小計 一九八四万五九九九円

右1及び3の損害の合計額から、前記争いのないてん補額(第二の二3)のうち法定相続分に従った額(一五六五万七三〇五円)を控除すると、頭書金額となる。

5  弁護士費用 二〇〇万円

原告佐代子が本件訴訟の提起、遂行を原告ら代理人に委任したことは、当裁判所に顕著な事実であり、本件事案の内容、審理経過及び認容額等の諸事情に照らすと、頭書金額が相当である。

6  合計 二一八四万五九九九円

三  原告充議、同達弥及び同吏紗の損害

1  固有の慰謝料

本件全証拠によっても、前記一2に認定の死亡慰謝料とは別個に、原告ら固有の慰謝料を認容するに足りる事情は認められない。

2  監護・教育費に関する損害

原告充議、同達弥及び同吏紗が主張する教育費等は、前記一1に認定の逸失利益とは別個の原告ら固有の損害ということはできない。

3  亡政明の損害についての各六分の一の法定相続分 各一一四三万四四三四円

4  小計 各六二一万五三三三円

右3の損害額から、前記争いのないてん補額(第二の二3)のうち法定相続分に従った額(五二一万九一〇一円)を控除すると、頭書金額となる。

5  弁護士費用 六〇万〇〇〇〇円

原告充議、同達弥及び同吏紗が本件訴訟の提起、遂行を原告ら代理人に委任したことは、当裁判所に顕著な事実であり、本件事案の内容、審理経過及び認容額等の諸事情に照らすと、頭書金額が相当である。

6  合計 各六八一万五三三三円

四  結論

よって、原告佐代子の請求は、被告らに対し連帯して二一八四万五九九九円、同充議、同達弥、同吏紗の各請求は、被告らに対し連帯してそれぞれ六八一万五三三三円及びこれらに対する本件事故の翌日である平成八年六月二四日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、原告らの被告らに対するその余の請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法六一条、六四条、六五条を、仮執行の宣言につき同法二五九条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 井上繁規 馬場純夫 田原美奈子)

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